2012年2月26日日曜日

ローリング・ストーンズのベスト・アルバム5選

今回は私の好きなローリング・ストーンズのアルバム・ベスト5のお話。

1970年前後からロックを聴いてきたロック・オヤジたち(私を含む)にとっては、ビートルズと、ストーンズと、ボブ・ディランの三組はとにかく別格の存在である。つまり、嫌いな人はいないということ。あるいは嫌いかもしれないが、その気持ちは表には出さないで、いちおう奉(たてまつ)っておく。
その上で、ハード・ロックがどうの、プログレがどうの、南部がどうのと言っているわけだ。もしかして違う人もいるかな?
だから聴いている守備範囲の違う人とでも、この別格大物三組の話題を出せば、たいていは話が通じて共通点を見出すことができる。
ただし、注意しなければならないのは、この年配のオヤジの中に少なからずいるストーンズのコアなファン、すなわちストーンズ・フリークの人たちである。この方たちは、他人の話に耳を貸さないばかりか、自分と違う意見をけっして許容しないので、深入りしないにこしたことはない。

去年の12月にローリング・ストーンズの『サム・ガールズ(女たち)』のデラックス・エディションが出た。内容はアルバム本編+ボーナス・ディスクの2枚組。たまたま通りかかったタワーレコードでは、かなり大々的にキャンペーンをやっていた。
前回書いたように、最近ではピンク・フロイドのデラックス・エディションのシリーズにも心を動かされたのだったが、ストーンズのこれにもちょっとそそられた。けれど、結局がまんして、買わなかったけど。
ちなみに私は『サム・ガールズ』も、ピンク・フロイドもすべて通常盤では所有している。ここで言っているのは、それに加えて、さらに買うか買わないかという話。
その前に出たストーンズの『エグザイル・オン・メインストリート(メイン・ストリートのならず者)』のデラックス・エディションは、とにかく何をおいても買った。通常盤はすでに2枚持っていたのだったが…(さいわいボーナス・ディスクはかなり良かった)。
しかし『サム・ガールズ』に対しては、そこまでの気持ちにはならなかったわけだ。悪くないアルバムだが、そんなに思い入れがあるわけでもない。「ひいき」の度合いが違うということだ。
というわけで、私はストーンズのどのアルバムが好きなのか、自分のストーンズ・アルバム・ベスト5を選んでみることにした。

まず結果は以下のとおり。
① 『ベガーズ・バンケット』
② 『スティッキー・フィンガーズ』
③ 『エグザイル・オン・メインストリート』
④ 『ラブ・ユー・ライヴ』
⑤ 『レディース&ジェントルマン』(DVD) 
次点(同順で)
⑥ 『ブラック・アンド・ブルー』
〃 『サム・ガールズ』

⑤はアルバムではなくて映画だからちょっと反則だけど、単なる記録映像ではなく、彼らが作品として作ったものだから、まあアルバムに準じるものということで。72年のライブはCDになっていないし。

これは厳密に言うと好きな順番に並べたのではなく、好きな盤5枚を発表年代順に並べたわけだったのだが、結果的には好きな順ということにしてもいいかな。
なんとなくわかると思うけれど、私はミック・テイラー在籍時の米国南部サウンド志向の時期のストーンズが好きなのだ。そういうファンはたくさんいると思う。というかたぶんそれがストーンズ・ファンの多数派なのでは?
最近のアルバム『ア・ビガー・バン』も良かったけれど、「昔の音に戻った」と言って評価するなら、昔の音そのものを聞いたほうがよいのでは?
以下ベスト5について一言コメント。

① 『ベガーズ・バンケット』
 とにかく渋いアルバムだ。
 初期の「サティスファクション」も「黒く塗れ」もたしかに良かった。けれどもそんな初期ストーンズは前作で終わり、まさにこのアルバムとシングル「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」からストーンズの黄金時代が始まったのだ。
音作りはシンプルで、アコースティックな音が耳に残る。その分、米国南部を志向する彼らの骨太な骨格がごつごつと見える。
 今はトイレ・ジャケットが標準仕様になって、以前の文字だけのジャケットがレアになってしまった。だが、あれにはあれで長い間眺めてきて愛着がある。なので、私は以前のデザインの紙ジャケ盤を大事に保有している。

② 『スティッキー・フィンガーズ』
 私が、リアルタイムで買った最初のストーンズのアルバムで思い出深い。高校1年生のいたいけない少年は、このアルバムでストーンズに完全にヤラれたのだった。
 「…ヒア・ミー・ノッキン」とか「ムーンライト・マイル」とか、変な曲があったり、何となくバランスの悪いアルバムだが、そこもまたストーンズらしいと思えてしまう。でもそもそもストーンズにバランスのいいアルバムなどあったか。

③ 『エグザイル・オン・メインストリート』
 ジャケも中身も混沌としていて、どろどろしたエネルギーに満ちたアルバム。今はストーンズの最高傑作なんていう人もいるが、出た当時の評価はあまりよくなかったと思う。
出た時は不評だったのに、その後「最高傑作」と言われるようになった2枚組3大アルバムというのを思いついた。ストーンズのこれと、ビートルズの『ホワイト・アルバム』、そしてクラプトンの『レイラ』。
それにしてもこのアルバムは、もともとLP二枚組だった。それが現行紙ジャケのようにCD1枚で、インナー・スリーブの片方が、ペラの紙というのでは、あまりにも寂しい。二枚組仕様の紙ジャケを出してくれないかな、即、買うけど。

④ 『ラブ・ユー・ライヴ』
上記『エグザイル・オン…』の次に、さらに期待を高まらせたわれわれに届けられたのが、あの『ゴート・ヘッド・スープ(山羊の頭のスープ)』だったのだ。私はがっくりし、しばらくストーンズから離れてしまう。
そんな私を再び引き戻したのが、このライブ・アルバムだ。
ちょうどこの頃からロック批評のイディオムとして「グルーブ」という言葉が使われるようになった記憶がある。このアルバムは、まさに濃いグルーブ感覚が大きくうねりながら持続していた。
ブルースとロックンロールをカヴァーしたLPのC面エル・モカンボ・サイドも、シンプルでルーズなパワーが素晴らしい。

⑤ 『レディース&ジェントルマン』(DVD) 
ストーンズのライブの絶頂期は、1972年の米国ツアーだろう。
残念ながらこのときのライブ録音はCDになっていない。しかし、約40年後、やっとこのツアーの映像(テキサス2daysから編集)がDVD化された。
暗いステージの上で、体を異様にくねらせながら歌うミック・ジャガー。妖しく強烈なオーラを放出し続けるその姿には、時代をねじ伏せる圧倒的な存在感がある。
その一方、直立不動のままギターからブライトで流麗なフレーズを繰り出すミック・テイラーもまた印象的だ。
ニッキー・ホプキンスのピアノと二人のホーンセクションをサポート・メンバーに加えたぶ厚い音の米国南部サウンドは、今聴いても完璧。

次点 『ブラック・アンド・ブルー』&『サム・ガールズ』
いったん離れたストーンズに『ラブ・ユー・ライヴ』で、再び回帰した頃聴いたアルバム。やっぱり全体のバランスは多少へんてこだが、どちらもそれなりによい内容だ。ずいぶん聴いた。
時流にあわせて方向を変えながらも自分たちの世界を展開していくこの人たちのしぶとさはすごい。


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