2012年4月16日月曜日

レコ・コレ誌のギタリスト・ランキングを見てあれこれ

レコード・コレクターズ誌の最新号(2012年5月号)の特集は、「20世紀のベスト・ギタリスト100」。
この雑誌も近年はネタ的に苦しくなってきたのか(?)よくランキング形式の特集をしている(ような気がする)。私もランキング好きだけど、この雑誌も好きだねえ(ちなみに、私の愛読誌です)。
で、さっそくページをめくってみる。今回は、この特集を見ながら思った、あーだ、こーだを綴ってみることにしよう。

栄光の第1位はジミ・ヘンドリクス。まあ順当なんだろうけど、じつは残念なことに私はジミ・ヘンドリクス「音痴」なのだ。どこがいいのかわからない。弾きまくっているのはわかるが、そこにフレーズが聴こえてこない。だから、かっこよく思えないし、ギター・ソロも印象に残らないのだ。ファンの皆さんごめんなさい。
この人の演奏で一番印象に残ってるのは、ウッドストック・フェスで弾いたアメリカ国歌。アメリカ国歌が、ギターの爆音ノイズによってズタズタに引き裂かれる。でもこれって、音楽じゃないよね、反戦パフォーマンスかな。

ジミの次の第2位がジェフ・ベックで、4位のエリック・クラプトンより上なのは私的には納得だ。どちらも天才だと思うけど、ベックの方がより「天才度」は上だと思う。ヤードバーズの頃からベックはときどき「とんでもないこと」をしてきた。
クラプトンよりヒット作も少ないし、一般的な人気度も低いと思われるベックが、ギタリストとしてちゃんと評価されたようでうれしい。

ジミー・ペイジが5位に入ったのもとてもうれしい。テクニシャンではなく、語弊があるけど「ハッタリ」タイプだから、レコ・コレ的にはあまり評価されないと思っていた。だから、もっと下ということもおおいにあり得そうなことだった。それが第5位とは意外な健闘ぶり。

一方で、ライ・クーダー(7位)やロリー・ギャラガー(16位)など渋いところが上位になっているのは、いかにもレコ・コレ誌らしいところ。何しろ、ジェリー・ガルシア(19位、グレイトフル・デッド)とかカルロス・サンタナ(24位)なんかよりも、この二人の方が上位なんだからね。
それにしては、同じく渋めのレコ・コレ好みギタリスト、ロビー・ロバートスン(ザ・バンド)が、72位とかなり下なのはやや不可解。

その他、全体にロバート・ジョンスン(9位)とかB.B.キング(10位)などのブルース系がけっこう入っているのもいかにもレコ・コレ的。
それと「ロック以前」の人たち、チャック・ベリー(3位)やジェイムズ・バートン(11位)なんかが幅きかせていたり、あるいはリチャ-ド・トンプソン(15位)やバート・ヤンシュ(43位)といったトラッド系の人が入っているのも同様にレコ・コレ的と言える。
じつは個人的にはそういう点にちょっと興味をそがれる。私はやっぱりロックの人なので。

それから、テクニシャンとして定評のある人たちの順位がけっこう低いのも意外だ。
超絶技巧派のスティーヴ・ハウ(イエス)が33位、ロバート・フリップ(キング・クリムゾン)が38位、ブライアン・メイ(クイーン)が46位などなど。さらには「超」超絶技巧派ジョン・マクラフリンとアラン・ホールズワースが、仲良く98位と99位という最下位付近に並んでいるのも気の毒。
ローリング・ストーンズからみでは、キース・リチャ-ズ(6位)やロニー・ウッド(69位)の10倍くらい巧いミック・テイラーが71位に留まっているのも、仕方がないとはいえ、やっぱりかわいそう。
バッファロー・スプリング・フィールドやクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングで張り合い、「永遠の」ライヴァル同士だった(はずの)ニール・ヤングとスティーヴン・スティルスの二人。
ヤングは下手というか不器用で、手癖とエモーションだけで弾くタイプ。これに対し、スティルスは器用で流麗で、テクニック的には勝負ははっきりしていた。だが、時を経て形勢は逆転したばかりではなく、ヤングが28位、スティルスが40位と大きく差がついたのだった。当時を振り返れば、ちょっとばかり感慨深い結果だ。その後の活動を比べれば、やむを得なないけれど。
この下手なヤングよりも下に、先ほど挙げたスティーヴ・ハウほか超絶技巧の方々が甘んじているのも、何だかちょこっと割り切れないような。

ここであらためてこの特集の前説を読んでみる。遅ればせながら、このランキングの趣旨を確認したら、「ロック/ポップスの世界に大きな影響を与えた人」というのが選出基準とか。なるほど、なるほど、つまり、うまい下手の順番ではないのね。わかりました。

 ただ「ロック/ポップスの世界」と言っているわりには、ジャズ畑のジム・ホール(82位)が入っていたりする。それなら、ブラジル勢から、ジョアン・ジルベルトやバーデン・パウエルといった新しいスタイルを築いた名人たちが入っても当然だったのでは。
 
それから他に入って欲しかったのは、ジョン・レノンかな。テクニック的には下手だったけど、同じく下手だが音楽的には影響が絶大だったニール・ヤングは入っているわけだからね゙。それに、ジョージ・ハリソン(32位)やポール・マッカートニー(80位)まで選ばれていることだし…。
それと懐かしいクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイバルのジョン・フォガティの名前を97位に見つけた。フォガティが入っているのなら、グランド・ファンク・レイルロードのマーク・ファーナーなんかも入って欲しかった。当時の日本では、ロック少年たちのギター・ヒーローだったのに。それと、シカゴのテリー・キャスなんかも。

ランキング中に名前を見つけて個人的にうれしかった人をもうひとり紹介。89位のジェイムズ・ブラッド・ウルマーだ。初期のブラック・パンク(ファンクでなく)的なアルバム『アー・ユー・グラッド・トゥ・ビー・イン・アメリカ?』や『ブラック・ロック』は傑作だと思う。このカテゴライズされにくい人が、下位とはいえちゃんと拾われていたことはやはりうれしい。

 こうして人の作ったランキングを見ながら、勝手なことを書いてきたわけだけれども、どうももうひとつ物足りない。やっぱりランキングは、自分で考えているときがいちばん面白い。自分自身を振り返っているような感じもする。
ということは、私のこれまで作ったランキングを見てくれている方々は、さてどう感じていることやら……。

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