2012年11月28日水曜日

キング・クリムゾン『太陽と戦慄』への道のり(第1回)

<40周年記念エディションを買うまでの私の道のり>

「デビュー40周年」ということで、今、世間を賑わせているのは、当然ユーミンだろう。記念のベスト盤の広告を、新聞の全面を3頁も使って出していたのにはさすがに驚いた。そんなお金をかけなくても、このベスト盤は飛ぶように売れるだろうに…。

それはさておき、ロック・オヤジの間で今話題のもう一つの「デビュー40周年記念盤」と言えば、何と言ってもキング・クリムゾンの『太陽と戦慄』の40周年記念エディションだ。今月の『レコード・コレクターズ』誌(2012年12月号)も、なかなか力のこもった特集を組んで紹介している。
この記念エディションは、つごう3種が発売されている。
まず、これまでにすでに出ている他のアルバムと同様の仕様のCD+DVD版。それからCD2枚組版。そして、破格の15枚組ボックス・セットだ。
クリムゾン・ファンのみなさんは、これにどう対応したのだろうか。

私は、はじめはいっさい買わないつもりだった。昨年、隠居生活に入ったとき、これからはもうデモとか、別テイクとか、リマスターとか、リミックスとかにはいっさい手を出すまいと心に決めたからだ。
しかし、今号の『レコ・コレ』誌の特集を見ているうちに、もぞもぞと食指が動き始めた。で、とうとうCD+DVD版を買ってしまった。価格は5千円弱。今年買ったCDの中では、一番高い買い物になってしまった。
しかもどうせ買うなら、これまでに持っている他のアルバムの40周年記念エディションとおそろいの、ディスク・ユニオン特製のボックス(アルバム・ジャケットをデザインしたもの)つきで買いたい。私は、このボックスつきで『宮殿』と『アイランズ』と『レッド』を持っている。『太陽と戦慄』だけ、箱なしというわけにはいくまい。というわけで、電車賃までかけて、新宿に出かけていって買ってきたのだった。

<今回の40周年記念エディションの「キモ」>

私にとっての今回の40周年記念エディションの「キモ」は二つだ。
ひとつは、1972年10月17日にドイツ、ブレーメンのスタジオで収録された3曲の演奏の映像。これが今回初公開されたのだ。
この内の一曲「ラークス・タングー…(パート1)」のみが、加工されて音楽番組「ビート・クラブ」で放映された。この映像は、「ビート・クラブ」のオムニバスを手に入れて見たが、狂人めいたミューアの姿が強烈に印象に残っている。この曲の加工前の映像を含む3曲の映像が今回はじめて世に出たというわけだ。

二つめのキモは、ボックス・セットに収録されている1972年のいくつかの未発表ライヴ音源だ。これまでまったく未発表だったものや、配信のみで未CD化だった音源が含まれている。

私の持っている「ビート・クラブ」は、VHS版なのでもう見ることができない。狂人ミューアをまた見たいし、このときの他の曲の映像もあるならぜひそれも見てみたい。買わないつもりの今回のCD+DVD版を買う気になったのは、ひとえにDVDの方に収録されているこの映像のためだった。

未発表ライヴ音源も気になったのだが、これはボックス・セットを買わないと聴けない。価格は22000円なり。うーむっ。15枚組と思えばそんなに高いとも言えないが、やっぱりあきらめた。

<40周年記念ボックスの概要>

このボックス・セットの概要については、今号の『レコ・コレ』誌の特集で、要領よく説明されている。
15枚のディスクの内容は二つに大別される。ライヴ音源とスタジオ音源だ。
『太陽と戦慄』が録音されたのは1973年の1月から2月にかけてのこと。その録音に先立つ前年の10月から12月にかけて、前月からリハーサルを始めたばかりの新生クリムゾンは、このアルバム用の曲をライヴの場で演奏しながらシェイプ・アップしていったのだった。このボックス・セットのディスク1から9までの9枚は、この時期のライヴ演奏を辿っているのだ。
残りのディスク10から15までの6枚は、アルバム録音時のデモ、別テイク、各種マスター等のスタジオ音源を集めている。
ボックスの原題に「コンプリート・レコーディングズ」とあるように、ライヴとスタジオ音源を合わせて『太陽と戦慄』制作に関係する音源を洗いざらい集めたというわけだ。

スタジオ音源の方は、あまり興味はない。しょせん資料的なものだろう。問題は、ライヴ音源だ。この頃のライヴは、アルバム収録曲に加えて、毎回長い即興曲を演奏している。即興だから、そのつど異なった展開になる。だからクリムゾンのブートは珍重されるのだ。

このボックス・セットのライヴ音源の内容は以下の通り。

〔ディスク 1 & 2〕  
Oct 131972  Live at the Zoom Club ( Frankfurt *『コレクターズ・キング・クリムゾン』として既発
〔ディスク 3〕  
Oct 171972  Live in the studio ( Bremen
*『コレクターズ・キング・クリムゾン』として既発
〔ディスク 4 & 5〕  
Nov 101972  Live at the Technical College ( Hull
*ダウンロードのみで流通
〔ディスク 6
Nov 131972  Live at the Civic Hall ( Guildford
*『コレクターズ・キング・クリムゾン』として既
〔ディスク 7
Nov 251972  Live at New Theatre ( Oxford *ダウンロードのみで流通
〔ディスク 8〕 
Dec 11972  Live at Greens Playhouse Glasgow,
*未発表音源
〔ディスク 9〕 
Dec 151972  Live at the Guildhall ( Portsmouth
*未発表音源

以上である。私の持っているアルバムを引っ張り出してこのリストと照合してみた。
『コレクターズ・キング・クリムゾン』のシリーズは、ディシプリン期以降は別として、その前までは当然全部持っている。だから、ディスク1、2のズーム・クラブ(フランクフルト)と、ディスク3のビート・クラブ(ブレーメン)、それにディスク6のギルドフォード公演はそれで聴ける。
それから手元のブートレグをひっくり返してみたところ、ディスク7から9までのオックスフォード、グラスゴー、ポーツマスでの公演の音源は、ちゃんとすでに持っていた。すっかり忘れていたのだ。長い間クリムゾンのファンをやっていたかいがあったなあ。
ボックスの方が多少音は良いだろうが、『コレクターズ・キング・クリムゾン』のシリーズと同様どうせブートレグから起こしたものだろうから、私の持っているものと格段に違うはずはない。

結局、持っていないのはディスク4、5のハルのテクニカル・カレッジでの演奏のみだということがわかった。これは悔しいが、これだけのためにボックスを買うほどでもないだろう。と、あきらめがついたのだった。

というわけで、手元のCDを順番に聴きながら、『太陽と戦慄』に到るクリムゾンの道を辿るというボックスの趣旨を疑似体験してみることにした。
その内容については、次回に書くことにしよう。

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